【勝者のトレード】書評

【勝者のトレード】書評

トレーダーズ証券為替ディーラーの井口喜雄さんの書籍 正式名称は【1日で数百億を動かす現役ディーラーが教える勝者のトレード】

筆者紹介

作者:井口喜雄
トレイダーズ証券 為替ディーラー

 

本書は、著者の専門である為替取り引きを念頭にした議論をしているが、短期取引の考え方は株取り引きでも同じように適用でき、株のデイトレーダーにも大変参考になる書籍である。


-メモ- 序章

どんな人に投資が必要か?
⇒お金を少しでも増やしたい人

 

もし、何もしなければ・・・
・お金が増える可能性はゼロ
・物価高の中では、少しずつ資産は目減りしていく

 

ただし・・・
取り引きを繰り返し、勝ち続けていける人は少ない。
((その理由))
@投資の仕組みを理解せず勝負する
A感情や何となくの値ごろ感で売買する

 

勝つための要素
@投資の仕組みをしっかりと理解する 
A期待値を考え、売買する

 

短期投資はゼロサムゲーム
簡単に儲けることはできない!

 

だから・・・
しっかりと勉強し、期待値を考えた取り引きをする

-メモ- 第1章

負ける個人投資家の特徴
@何となく値ごろ感で取り引きをする
A自分のポジションに影響される
Bナンピンをする

 

Aは、自分のポジションに都合が良いような情報を集めたり、都合よく考えたりしてしまうということ。少し話は違うかもしれないが、著名投資家テスタさんも、似たようなことを言っていた。自分のポジションは市場の価格形成には何の影響をないので、エントリーした株価を気にせず、純粋にその瞬間の株価の方向性を見極めていくことが必要。

 

負ける個人投資家から脱却する方法
適切な損切りを確実に習得すること

これは、筆者の経験から第一に挙げられること

 

どうして適切な損切りが必要か?
⇒退場せずに相場にとどまり続けられる
⇒相場で長く経験を積み、実力を付けていく!

 

損切りが出来なければ、一発で相場から退場させられてしまうこともあり得る。

 

勝率が100%の投資家などあり得ないので、全ての投資家がどこかで損切りをしなくてはならない。その際に、上手に負けを認め、次のトレードに移っていくことが必要である。

 

損切はどのタイミングで行う?
@抵抗線、支持線などで損切り
Aテクニカル指標を使って損切り
B切りの良い株価、心理的節目で損切り
C自分の決めた値幅で損切り
Dファンダメンタルズの変化で損切り

 

理想的な損切りポイントは、「マーケットが変化したとき」だと筆者は言っているが、確実に損切りを行うためには、上記の@〜Dを使って、機械的に損切りを行うようにするのが良い。

-メモ- 第2章

取引参加者のポジションを考える
⇒その後の行動を予測し、対処する
@ポジションと同じ方向に向かう
A反対の少数派に回る

 

@は、順張り的にみんなと同じ方向で取り引きを行う。大きな流れに乗るというトレードの基本

 

Aは、人と同じ考え方をしない方が儲かるということ。人の考えの先回りをするということ。

 

筆者は、短期売買ではAの方が大きく勝つことにつながりやすいと主張している。

 

例えば、「今は、多くの人が株価がもっと上がると考えて、大きく上昇を続けているが、永遠に上がり続けることはない。だから、ここでは買いでエントリーせずに、株価が下がりそうな気配を感じたらすぐに空売りしよう。きっと、高値で買っている人達が、慌てて売り始めて大きく下がるのではないか。」というような考え方。

 

レンジブレイクを狙うチャンス
しばらくレンジ相場、トレンド相場が続いた後は、そこからブレイクを狙うチャンスがある。これもA反対の少数派に回る、の考え方の一つ。

 

レンジ相場もトレンド相場も、多くの人が、一定の支持線、抵抗線などに沿って株価が動くと考え、そのトレンドに沿った売買を行う。ただ、このトレンドも永遠に続くことはありえず、どこかで、そのレンジ相場、トレンド相場がブレイクする瞬間が訪れる。そうした時が、大きく儲けるチャンスになる。

 

レンジブレイクの問題は・・・
⇒いつ、そのブレイクが訪れるか、ということ。

 

筆者曰く、ブレイク狙いで大切なのは、ブレイクしたときの動きの大きさである。ブレイクするか、しないかの確率は、50%だとしても、ブレイクした時の飛距離は、レンジで動いている時よりもずっと大きくなるので、そこで大きく利益を出す。

 

レンジブレイクで大切なこと
リスクリワードをしっかり考える!

 

相場は、実際には、上がるか、下がるかは誰にも予知できないので、ブレイクするかしないかの確率は50%だと考える。もし、ブレイクせずに、レンジに戻った場合には、そのレンジ相場の値幅分の損失となる。この損失を1とすると、ブレイクしたときに1よりもずっと大きく利益をあげられるならば、それは期待値的に優位性のあるトレードと言える。

-メモ- 第3章〜第8章

第3章から第8章までは、より為替のことを念頭にした議論をしている。これ以下は、株の短期トレードにも応用できそうなことのみをメモしていく。

 

マーケットにあまり動きがないときは・・・
⇒一日中じっと椅子に座っているだけの時もある。
きっと、無理して、トレードはしないのだろう。

 

為替では、通貨オプション取り引きの影響が大きい
⇒しっかりと考えれば、戦略が練りやすい
株でも、イベントや指標など、株価の振る舞いに影響を与えるものをしっかりと研究し、戦略を考えることで、勝率、期待値を大きくすることができるだろう。

 

ボラティリティー・・・
値動きがあるからこそ、利益が上がる
⇒ボラティリティとリスクは別のもの
ボラティリティが大きくなると、リスクコントロールは難しくなるが、それを上手く利用することで、プラスにすることができる。その方法を身に着けなければいけない。

 

AIやアルゴリズムに対して・・・
AIやアルゴリズムには、速さでは勝てないので、それ以外のところで勝負しなければならない。AIが気づかない歪みや盲点を狙っていく。

 

値動きが一番の情報・・・
短期トレードでは、複雑な指標、戦略、システムよりも、値動きそのものが一番重要な情報となる。
⇒ローソク足、板を読みながら、自分の手法、スタイルを継続する。

 

自分の手法を確立するためには、実戦での試行錯誤を積み重ねるしかない。確固たる戦略を持ち、その戦略に忠実にトレードし、トレード結果の反省、戦略の練り直しを継続していく。

 

為替は、時間帯によって、値動きが大きく変わる
⇒株でも、時間帯、季節等の特徴を理解し、対応することで、デイトレードの勝率、期待値を向上させられるかもしれない。

 

テクニカル指標では勝てない
筆者は、為替の分野で様々な指標を使い、トレードの試行錯誤を行ってきたが、テクニカル指標に優位性を見出すことはできなかった。

 

テクニカル指標を利用するときは、多くの人が見ている指標を使うこと。

 

億トレーダーの共通点
(1)億トレーダーは、チャートをずっと見ている
人より多く様々なチャートを見ているからこそ、人より経験値が高く、トレードが上手くなる。

 

(2)独自の投資スタイルを持っている
勝ち方に正解はなく、過去のトレード手法などから出発し、コツコツと実践、検証を繰り返していくことで、自分に合った勝ち方が身についてくる。

 

(3)常に情報収集している
いつもトレードに関係する様々な情報を集めており、それをトレードアイデアに落とし込めないか、常に考えている。

 

マーケットは変化していく
⇒勝ち続けられる投資家は、マーケットの変化に付いていき、自分の投資スタイルも変化させなければならない。

 

メンタルはすごく重要
小さいポジションでは、確実にプラスにできるようになっても、ポジションを大きくしていくと、これまでと同じようなメンタルではいられなくなり、スタイルが崩れてしまうことが良く起こる。これを克服するためには、少しずつポジションを大きくしていき、トレードの繰り返しにより、メンタルを保てるようにするしかない。

 

-終了-